2017/4/1 - DoTTS Faculty 教員コラム
クライストチャーチ訪問記:その1(永野隆行)
ニュージーランドのクライストチャーチといえば、みなさんは何を連想されるでしょうか。東日本大震災の前月(2011年2月)22日に発生した、ニュージーランド南部を中心とした地震(カンタベリー地震)では、クライストチャーチの語学学校で勉強していた日本人留学生も多数犠牲になりました。今でも時折、地震発生のニュースが届きます。「地震」という言葉が思い浮かぶことでしょう。
実際に現地を訪れてみれば、当時の地震の傷跡は予想以上に深く、バリケードで囲まれながら、いまだに手つかずの建造物や、更地にされたままの土地も市内のあちらこちらにあり、復興の道のりは遠いとの印象を持ちます。街の中心に位置し、街のシンボルであったクライストチャーチ大聖堂(写真1)も半壊したままの状態です。
復興の遅れはただ単に「見た目」の問題ではありません。地震の「後始末」をどうするか、いまだに結論が出ていない部分があり、前に進めない事情があると言えます。街を案内してくれたタクシー運転手が語っていましたが、一つには地震保険の問題があるようです。あまりに膨大な件数のため、地震保険の適用と処理が進んでおらず、再建に取りかかれない人も多いのだといいます。また前述の大聖堂をめぐっては、再建か解体かで意見が分かれ、法廷闘争にまで発展しました。大聖堂を管理する団体は、再建には巨額の費用がかかるとして、解体する方針を表明しましたが、文化財保護団体はあくまでも改修して今の外観をできるだけ残すべきだと訴えています。また、多くの日本人学生が犠牲となった語学学校が入っていたビルについても、ビルの設計者を刑事訴追するかどうか、結論が出ていない状況です。
他方、復興は時間がかかってもそのプロセスは着実に進んでいるとも言えるでしょう。クライストチャーチ大聖堂ですが、2013年には仮設大聖堂が別の場所に建てられました。日本人建築家の設計による「カードボード・カセドラル」は、その名の通り、建材に段ボール(カードボード)を使って建てられたもので、数十年の耐久性があると言われています(http://www.cardboardcathedral.org.nz/)。また、ショッピングモール(Cashel Mall)の跡地にはコンテナを仮設店舗として活用した、「リ:スタート(Re:START)」が作られました(写真2)。カラフルに彩られたコンテナ店舗には、多くの市民と観光客が集まり、とても活気にあふれています(http://www.restart.org.nz/)。ここで食べたホットドッグは格別でした。
「クライストチャーチ訪問記:その2」へ続く。