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2018/1/30 - DoTTS Students 学生コラム

砂糖きび畑を渡る風 (大野友暉)

●ジャマイカでの学生生活
西インド諸島大学モナ校(UWI)での留学はとても刺激的です。治安はすこぶる悪く、物価も安くはありませんが、気候は温暖で過ごしやすいと言えます。私が留学している今年は雨が多かったのですが、例年は太陽が燦燦と輝く中、カリブの湿り気の無い風に吹かれながらキャンパスライフを送ることができるそうです。また、大学内には野生の犬やオウム、ヤギまで生息していて、日本では体験できない自由でワイルドな雰囲気を味わうことができます。
学内にあるStudent Unionという場所では、定期的に音楽フェスが開催されていて、レゲエやダンスホール・ミュージック、スカなど、カリブならではの音楽を有名ミュージシャンと共に楽しむことができます。ジャマイカの学生は激しくダンスを踊るので、最初は驚かされるかもしれませんが、歌詞やダンスの成り立ちもあわせて知ることで、見た目の力強さだけでなく彼らの文化も体感できます。

●UWIの授業
授業はセミナーとチュートリアルの二つに分かれていて、講義形式のセミナーを終えた後は、ディスカッションやプレゼンテーションを通してチュートリアルの授業を進めていくことになります。1学期目に選択して面白かった授業は、Introduction to AnthropologyⅠ(人類学の基礎コース)で、チュートリアルの最後に出されたCaribbean Identityという課題では、それぞれに割り当てられた、ジャマイカだけでなくトリニダード・トバゴなどのカリブ諸国のUWIの学生たちと、スカイプやWhats Appを使って、カリブ人のアイデンティティを探ることになりました。私は日本人から見たカリブ人のイメージを私見として発表し、カリブ人である彼らと意見を交わしました。後日、話し合いの内容をもとに自分でテーマを決めて長めのエッセイを書いたのですが、大変骨の折れる作業になりました。今でもその大変さははっきりと記憶しています。
もう一つ、これは人類学とは違う学部のコースですが、The Culture of Rastafariのクラスもとても興味深い内容でした。この授業ではジャマイカで始まった宗教思想運動のラスタファリについて勉強していったのですが、最初は思想の複雑性やラスタ独自の考え方や言葉にとても戸惑いました。しかし、教授に分からないことを質問したり、パトワ語(ジャマイカで使用されるクレオール言語)の部分はフラットメイトに聞いたりして、少しずつ理解を深めていきました。授業終盤では、フィールドレポートを書くために泊りがけでラスタの集会を訪れ、彼らにインタビューするなど充実した学習ができたと思います。留学したてで2000番台のコースは私には重かったのですが、1学期目しか開講されていないのであえて挑戦しました。単位も無事に修得できて良かったです。

●「先祖は奴隷だった」
最後に、友人から聞いたこの言葉について触れてみたいと思います。少し堅い話になりますが、ジャマイカが独立したのは1962年のことで、奴隷だったのは過去の遠い出来事ではありません。経済的にも未だ欧州に従属している節があり、社会の色々な場面に植民地時代は尾を引いています。私は留学する前、その事実について知ってはいましたが、理解できていたとはいえませんでした。しかしこの国で日々を過ごす中で、その歴史の重みを、「当事者意識」をもって考えることができるようになったと思います。
UWIは実は、砂糖プランテーションの跡地に建てられた大学です。国産のラム酒も砂糖植民地の名残です。勉学だけでなく色々なことに意識を向けると、昔と今の結び目が見えてきます。残り半分の留学生活も、充実した日々が過ごせるよう楽しみながら学んでいきます。

(国際交流センター・現地レポートより転載)

西インド諸島大学モナ校(UWI)のキャンパス。
学内で開催された音楽フェスの様子。
泊りがけでラスタの集会を訪れました。
一緒に学ぶ仲間たち(右から四人目が筆者です)。