2024/11/28 - News&Topics
アイヌ料理の会を実施しました
2024年11月9日、交流文化学科のDokkyo Diversity Projectの一環として、「アイヌ料理の会」を実施しました。参加者の古谷一真さん、富永進太郎さん(いずれも4年生、須永ゼミ所属)に報告をお願いしました。
11月9日、獨協大学コミュニティー・スクエアにおいて、講師の宇佐恵美さんをお招きしたアイヌ料理の会が開催されました。そのイベントに私たちも参加したので、その様子をお届けしたいと思います。最初に講師の宇佐さんよりアイヌ文化の簡単な解説をしていただいた後、調理実習を行いました。まず最初に、今回の講演の中で特に印象深かったことを3つに分けて紹介します。その後調理実習の感想を書いていきたいと思います。
➀アイヌ語
「イランカラプテ」講演会は、宇佐さんのこの言葉から始まりました。この言葉は、アイヌ語における挨拶言葉であり、日本語で言う「こんにちは」と近く「あなたの心に触れさせて(寄り添わせて)いただきます」といった意味を持つ言葉です。この挨拶交わした後「トナカイ」や「シシャモ」など日本で普段当たり前のように使用されている言語のルーツがアイヌ語であることを宇佐さんから説明していただきました。私たちの日常用語として、アイヌ語が使用されていることにとても驚きました。
また、宇佐さんは、「みんなは日本語を親から教わったと思うけどそれは当たり前ではないんだよ」とおっしゃっていました。宇佐さんはアイヌ語を学習中のため、まだお子さんに伝えることができないそうです。このお話を聞き私たちが当たり前だと思っていた親から言葉を学ぶといった行為は、決して全員が享受できているわけではないのだと知ることができました。
②精神文化
続いて宇佐さんから「信仰」に関するお話をしていただきました。アイヌの人々は、自分たちが暮らすアイヌモシリ(北海道)の動植物、道具類、津波や地震、流行病など様々なものに、「ラマッ」と呼ばれる「霊魂」が宿っていると考えています。中でも人間にとって重要な働きをするもの、強い影響力があるものをカムイ(神)と呼ぶのだそうです。カムイ(神)「信仰」に関するご説明の中では、宇佐さんのお子さんのお話が私の中で印象に残っています。お話では、私たちの日常生活においても普段使用するペンや黒板消しなどを例に、「使い終えたら感謝してから捨てる」といったアイヌ独自の考えを共有していただきました。日本のマジョリティである私たちの多くは、言語習得や考え方の継承を当たり前に親や周囲の大人からしています。しかしそういったことを考えるに当たって、今回の講演会は、たとえば「鉛筆からカムイの世界を想像する」など私たちがアイヌの世界観に触れることで文化多様性を大切にする生き方を身に着けていける、とても良い機会であったと感じます。
また講演会では、アイヌ民族に伝わる竹製の楽器「ムックリ」を宇佐さんに演奏していただきました。耳にしてみると「ぴよーん」という、私がこれまで聞き馴染みのない、不思議な音色でした。また宇佐さんからは楽器に関するご説明もしていただきました。この楽器は、「雨や風の音、動物の声、自分の感情などを自由に表現することが出来る」とのことなので、私自身も何かに思い悩んだり、自分を表現したいときなどにいつか演奏してみたいとも考えました。
③日本の先住民族として
「アイヌ民族が日本にいることが当たり前となってほしい」という宇佐さんのお話も印象に残っています。現在の日本人は、日本に住んでいる外国人やハーフなど、目に見えやすいマイノリティに対しては、配慮しようとする動きが活発になってきたと思います。しかしアイヌ民族に対しては、恐らく未だに存在自体を知らず「配慮しなくてもいい」といったような考え・風潮があるように私は感じます。「近世・近代に関わらず現代においても未だ、アイヌをルーツに持つ多くの人々が貧困を余儀なくされ、様々な局面で差別の対象となる状況が続いている」とお話の中で宇佐さんが語っていただきました。日本に住む全員が、人の持つルーツに対して寛容になり、誰しもが胸を張って生きていくことが出来る社会を創り上げていく必要があるように感じました。
調理実習
これらの話が終わると調理実習に移りました。今回私たちが作ったのは、「オハウ」と呼ばれる鮭の汁物と「イモシト」と呼ばれるジャガイモをすり潰して餅状にして焼いたものです。普段は、料理をしないので私はあまり役に立たなかったかもしれません。とはいえ、大勢の人と一緒に料理をすることは滅多にないので貴重な体験でした。始めましての人たちばかりでしたが、料理の中で自然と会話ができたのでとても良かったです。私は、ジャガイモの芽取りと「すり潰し」を担当しました。「すり潰し」は、13人分の量が多かっただけでなく、フォークとゴムベラを使って潰したため少し大変でした。周りの方々は慣れているようで私が目の前の作業に追われている中、野菜を切り、鍋に入れ、火にかけ料理が形となっていました。
そうして、完成した料理はとても美味しかったです。「オハウ」の方はシンプルな塩味で食材本来の味を感じました。昨晩、二郎系ラーメンを食べてから何も食べていなかった私にとってはもう健康面でこれ以上ない料理です。「イモシト」は想像以上の味でした。ジャガイモを揚げた料理やお菓子は、数々あると思うのですが餅っぽい食感が他にはない感じだと思いました。また、ジャガイモがしっかりと潰れていて安心しました。
以上当日の報告です。改めてになりますが今回のイベントを通じてアイヌ文化や民族についてより深く知ることができました。これまで授業などを通じてアイヌ文化を知っていましたが、実際にアイヌにルーツを持つ人々に話を伺うことでこれまで見えてこなかった面に気づくことができました。本文にも書きましたが、私たちが当たり前だと感じていたアイヌ言語の伝承が難しくなっているの話は今も心に残っています。交流文化学科では、世界中様々な民族についても学習しますが当事者に会ってみないと見えてこないものがあるのだと感じることができました。観光もそうですが、直接「会う」、「話を聞く」といった体験を大切にしていきたいと思います。