2025/6/16 - News&Topics
「仮放免の子どもたちの絵画作文展」(2025年5月14日~6月11日)
「入管を変える!弁護士ネットワーク」が毎年実施している絵画作文展から入賞作など約20点を借受け、西棟1階ロビーと天野貞祐記念館入り口図書館前の展示ケースの2箇所で、4週間の展示をおこないました。
在留資格が得られないまま日本で暮らしている外国籍の人たちがいます。帰国すれば迫害を受ける可能性が高いのに日本政府からは難民と認定されなかったり、日本人パートナーと暮らしているのに偽装結婚を疑われたり、長年の滞在で生活の基盤が日本にあり、他国での生活がもはや困難なのに入管からは出国を求められている、といった人たちです。入管からは「仮放免」という身分を与えられることが多いのですが、就労や健康保険への加入ができず、県外への移動にも許可が必要など、人間らしい生活の権利を奪われ、収容や強制送還の恐怖に怯え、入管からは「送還忌避者」と呼ばれ、まるで犯罪者のように扱われてしまいます。
親が仮放免だと、子どもは日本で生まれていても、あるいは幼いときに日本に連れてこられた場合でも、親と同じに仮放免になってしまいます。義務教育を受ける権利だけは保障されていますが、専門学校や大学への進学となると受験を断わられてしまったり、奨学金をもらえなかったり、日本人と較べて、あるいは在留資格のある外国人と較べても、大変辛い境遇に置かれているのです。
2024年6月に施行された改訂入管法は、在留資格のない外国人に(たとえば難民申請を3回以上繰り返すと強制送還の対象にされるなど)一層厳しい状況を作りだしました。しかし、日本生まれの子どもとその家族に在留資格を与えるという、日本初めての一斉アムネスティ―が同時に実施されたのは、喜ばしいことでした。
喜ばしいことではあったのですが、「子どもたち全てに人権を保障する」のではなく、「いかに対象となる子どもたちを減らすか」に力点を置いたかのように見える、入管による線引きが行なわれ、「日本生まれではない」、「学校に通っていない」、「親に看過し難い消極要素がある」などの理由で在留資格を得られなかった子どもたちも大勢いました。また、今回の措置が「一回限り」と強調されたことも大きな問題だと思います。
在留資格をめぐる親の事情は、子どもたちとは切り離して考えるべきです。自由な進学がままならず、専門学校や大学に入れても卒業後の就労が認められるか分からない社会は、子どもたちに「将来の夢を描くな」と言っているのと同じです。一度しかない人生の芽を最初から奪い取ってしまうような残酷な所業を、私たちは許すべきではありません。
絵画作文展の展示に触れてくれた大学生たちが、不当に夢を奪われている子どもたちの存在を知り、日本社会の不正義を糾すために行動してくれることを願ってやみません。(文責:交流文化学科教授、高橋雄一郎)
*展示した作品から2点、紹介します。
「私のふるさと」のテーマで応募された作品、「日本が大好き」と書かれています。

大学に進学して「弁護士になりたい」という作品。在留特別許可を得ることができた子どもの作品と伺っています。支援してくれた弁護士さんたちへの感謝の気持ちと、法律を学んでより多くの子どもたちの力になりたい、という強い熱意が感じられます。

*アンケートに記入いただいた方の感想から、いくつか紹介します。
私も日本生まれ日本育ちの移民2世のため、彼らの気持ちは痛いほど分かります。そもそも何が日本人を定義づけるのでしょうか?
以前、映画『東京クルド』を見たことがあります。人種や障害、ジェンダーなど、社会的に弱い立場の人たちがより苛酷な状況に置かれていると認識しています。
自分は今20歳ですが、お恥ずかしながら仮放免について全く知りませんでした。子どもたちの絵や作文、絵本を読み過酷な現実を知りました。自国が危険だから避難してきたのに避難先でもこのような境遇だなんて。日本国憲法で「健康で文化的な最低限度の生活」が保証されているのに、人権はみんなのものと当たり前のように言っているのに、すぐ近くでそれが当たり前でない人がいるというのはすぐにでも解決しなければいけない問題だと思います。今回のイベントのようにまずは現状を痴れるイベントに参加したりニュースを見たりして、選挙など自分が何か変えられる手助けができる場には参加しようと思います。(3年)
生涯学習で訪れた者ですが、今まで知らなかった、胸が痛む事実をどう受けとめるか、考えさせられました。
とても意義深い企画であり活動であると思います。途方もないデマと真実が、あらゆるメディアや巷において、ごった煮のようになっている現実があると思います。〔中略〕真実を真実として地道にでも報じ続け、それによって一人でも多くの人が、少しでも幸せでいられるような社会となることを祈っております。(卒業生)
*最後に展示風景の写真を何枚か貼り付けます。





以上
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