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2024/4/4 - DoTTS Students 学生コラム

早稲田大学GSセンター訪問(平野乃愛、新井咲姫)

2月28日、早稲田大学GS(ジェンダー&セクシュアリティー)センターを訪問しました。職員の山口博之さん、専門職員の古堂達也さんに、私たち(平野乃愛、新井咲姫/交流文化学科4年・高橋ゼミ)がお話を伺ってきました。

写真:センターが位置する建物前の工事現場には
    レインボー・フラッグが掲げられていました

GSセンターは、早稲田大学創立150周年を記念して行われた2015年の学生コンペで総長賞を獲得した企画を基に、ジェンダーやセクシュアリティにかんする学生の相談や啓発を主業務として2017年、日本の大学に初めて開設された組織です。

2024年秋学期の全カリ総合講座「多様性を選択する―ダイバーシティと日本社会―」でGSセンターの活動を紹介したいと考えている高橋先生(雄ちゃん)と一緒に行きました。

【GSセンターとは?】

初めにGSセンターの役割についてお話を伺いました。以下の記述はお話しの内容に加え、2022年度のGSセンター活動報告書も参考にして書きました。

https://www.waseda.jp/inst/gscenter/assets/uploads/2023/04/0b13482c29ddb702b65cb02e9688cdc4.pdf

GSセンターの役割は、早稲田大学のLGBTQ+(性的マイノリティなど)の学生や、ジェンダー・セクシュアリティに関心のある全ての人々(アライ含む)に居場所を提供し、誰もが自由に利用できるセーファースペース/リソースセンターとして機能することです。主に4つの活動があります。

1つ目の活動:うけとめる=「居場所づくり」と「相談支援」
→学生同士で交流ができるフリースペースがあり、自分たちでお茶を淹れてお喋りや持参したお弁当を食べることができます。
→クローズドなスペースで専門職員が相談を受けてくれます。英語での対応もできます。
→「リソースコーナー」の提供、ジェンダーとセクシュアリティーにかんする書籍、雑誌、コミックスの閲覧と貸出や、DVDの視聴が可能です。授業課題の準備にも役に立ちます。

2つ目の活動:つなげる=学内の課題の可視化と解決。
→入学試験中、監督員による受験生のトイレへの付き添い方法の見直し。
→「通称名使用願」の英文表記の見直し。
( ”Signature of the applicant him/herself” の文言が heとshe以外の三人称を使用する学生に対してインクルーシブでなかったため、性別二元論に基づかない”Signature of the applicant” に変更したとのことです。)
→大学が公表している学生数などの統計資料から性別情報表記の見直し。
→WASEDA ALLY WEEKS中、大隈重信銅像横に看板設置など。

3つ目の活動:つたえる=学生へのGSセンター紹介や啓発活動、新入職員への研修など
→GSセンター紹介は2022年中に9回実施し、1282人が参加したそうです。
『学生とアライのためのサポートガイドVer.6』の発行、などhttps://www.waseda.jp/inst/gscenter/assets/uploads/2024/03/WEB_supportguide_JP_V7.pdf

4つ目:ひろげる=イベントの開催、ウエブやSNSを使った広報
→「おしゃべりラウンジ」や、「お笑いとジェンダー」、LGBTQ+の生徒への「就活・就労イベント」等の企画を行っています。2022年度には46回のイベントが実施され、参加者数は約1400人以上でした。

【2022年度報告書に紹介されているイベント例】

小・中規模イベント

・Podcast番組 早稲田大学GSセンター presents Queering Waseda
・オンラインラウンジ
・マッチングアプリについて語ろう!
・「クローゼットについて考える:カミングアウト戦略比較」(ゲスト: 郭立夫さん)
・「恋、なにそれおいしいの?」な私たちのしゃべり場~Aロマンティック/Aセクシュアル&かもしれない人へ Ver. 1 & Ver. 2
・北村紗衣先生と考える、これからの舞台の楽しみ方 ―フェミニスト批評というまなざし―
・LGBTQ+&かもしれない人のための就活・就労(ゲスト: キャリアコンサルタント1名とパーソナルストーリーをお話くださった3名の皆さん)

大規模・コラボレーションイベント

・オープンキャンパス(GSセンター見学、テーマトークセッション4回など)
・寝た子を起こせ!今はじめる、オトナの性教育(主催:早稲田大学学生部学生生活課、協力: GSセンター、ゲスト: 藤井ひろみさん)
・WASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKS(全9イベント)
・Aro/Ace調査報告会(共催: AsLoop、NPO法人にじいろ学校、GSセンター、ゲスト:平森大規さん)
・シンポジウム「LGBTQ+にとって過ごしやすい大学って? ~高等教育機関におけるD&I~」(開催:キャンパスクライメートリサーチグループ [CCR]/大学ダイバーシティ・アライアンス [UDA]、共催: 早稲田大学SDC、協力: プライドハウス東京居場所づくりチーム)

私(新井)が関心を寄せているのは、「LGBTQ+&かもしれない人のための就活・就労」の就活イベントです。現在、就職活動を進めていますが、性別の記入欄や、男女で職種が分かれている企業など、依然として存在する状況により、当事者にとっては記入そのものがストレス源となる場合もあります。また、就職活動は、精神的に苦痛を伴うことが少なくないにもかかわらず、当事者にとっては性別に基づく差別や違いによる悩みが重くのしかかっていると感じています。このような状況が、就職活動中の当事者にとって余計な負担となっていることを受け、対応するイベントの重要性を強く認識しております。獨協大学でも主催することで、就職活動においての情報交換や、悩みを話す機会が生まれ、当事者の悩みや不安を改善できると思います。
https://note.com/gscenter/n/n429acfebdc43


私(平野)が特に興味を持った、参加してみたいと感じたイベントは、2022年10月24日(対面)、31日(オンライン)で開催された『「恋、なにそれおいしいの?」な私たちのしゃべり場~Aロマンティック/Aセクシュアル&かもしれない人へ~』です。Aロマンティック/Aセクシュアルという性的指向について、それぞれの定義や当事者の交流についてこのイベントを通じて理解を深めたいと考えました。ロマンティック/Aセクシュアルの当事者同士の交流会が少ないという点から、同じような経験や悩みを抱えている人たちと出会い、支え合えるコミュニティの存在は重要であると感じます。イベントの内容やアンケートコメントから、参加者がオープンでフレンドリーな雰囲気の中で交流できる場だったことが伝わってきました。獨協大学でも当事者の方やかもしれない人の交流する機会があれば、自身の経験や悩みを共有し、お互いに励まし合う場を得ることができ、精神的な支えとなるだけでなく、孤立感や不安を軽減する効果も期待できるのではないでしょうか。
https://note.com/gscenter/n/nb8f621f036b0

【グラウンド・ルール】

GSセンターでは、「グラウンド・ルール」が設けられています。グラウンド・ルールとは、入退室が自由であることや、みんなが自分と同じ考えではないという異なる考え方や視点を尊重すること、外見や見た目に基づいた偏見を持たないこと、他者のプライバシーを守ることなど、GSセンターを利用する際の7つのルールです。これらのルールを設けることで、セーファーな空間づくりが徹底されています。ルールが守られることで、誰もが自分らしくいられる居場所を見つけられ、安心して相談や交流ができる環境が提供されます。また、異なる背景や立場の人々が尊重されることで、差別や偏見のないコミュニティが形成されることへとつながります。「グラウンド・ルール」の存在は、GSセンターが誰にとっても包摂的(インクルーシヴ)で受け入れられる場所であることを示すとともに、参加者が安心して活動できるようにするための重要な手段となっています。


以下、私たちの質問からいくつかを紹介します。

Q. 誰もが入れるようにするために、敷居をどう下げているのでしょうか?
-「GSセンターの利用=当事者」とならないように、オリエンテーションなどでは、誰でも利用が可能であることを強調しています。また、ジェンダーやセクシュアリティを別のトピックと結びつけることで、新たな層に向けてアプローチを行っています。

Q. 専門職員に必要な資格がありますか?
 -資格などの要件は設けていませんが、専門知識を有し、スキルや経験を持つ方を採用しています。

Q. 高校生/受験生からの問い合わせはありますか(オープンキャンパスなど)。
-オープンキャンパスで実施される学内ツアーにGSセンターを開放しており、毎回100人程の高校生、受験生や親御さんが訪れます。

Q. 教職員への働きかけについて教えてください。
-大学としてダイバーシティ推進室が新入職員と学生対応のある部署の職員全員に研修を実施しています。また、教職員向けの「LGBTQ+学生への配慮・対応ガイド」を発行しています。
https://www.waseda.jp/inst/diversity/assets/uploads/2024/03/2024_LGBTQ_guide.pdf

Q. アライ(Ally)を増やすための活動について教えてください。
-学生を啓発する場として「WASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKS」イベントを開催しています。GSセンターの学生スタッフたちが企画から立ち上げています。
このイベントは、早稲田大学に関わりのある一人ひとりのLGBTQ+の人が自身の力を認識できる場づくりとアライの存在の可視化を通して、性のあり方に関わらず、誰もが過ごしやすい早稲田大学にすることを目的としており、2023年の「WASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKS」では4つの企画が実施されました。

・「ジェンダー平等」とバックラッシュ:東アジアのクィア運動からの考察 (A remote lecture in Japanese)
・教えてぱて先生!ボカロから考えるジェンダー・セクシュアリティ (A hybrid, interactive lecture in Japanese)
・最強★ALLY道場 日常にゴロゴロ転がる差別を倒せるようになろう!(An in-person workshop in Japanese)
・WASEDA PRIDE PARADES –ありのままでしあワセダ–

特にイベントの一つである「教えてぱて先生!ボカロから考えるジェンダー・セクシュアリティ (A hybrid, interactive lecture in Japanese)」は、「ボカロ楽曲」という身近な要素を通じて、ジェンダーやセクシュアリティというテーマについて学ぶことができるイベントです。ボカロ楽曲のファンであれば、より深く理解を深めることができます。一方で、ボカロ楽曲に馴染みのない人も、音楽を通じて新しい視点を得る機会になるかもしれません。このような多様な参加者が集まることで、さまざまな意見や考え方が交わされる機会となります。「お笑いとジェンダー」のイベントのように別のトピックやテーマを結びつけることで新たな層にアプローチすることが可能となり、ジェンダーやセクシュアリティについて知る・話すきっかけになります。獨協大学でも大衆的に関心の高いエンタメ要素などとジェンダー・セクシュアリティのトピックを組み合わせたイベントがあれば、多くの学生に興味・関心を持ってもらえるのではないかと感じました。

 

最後に、今後取り組んでいきたい課題や学生参画のあり方についてお伺いしました。

・学生寮における課題として、現在いくつかの寮がジェンダー別になっており、ジェンダーのみに捉われない寮の運営が求められています。ジェンダー別の寮を完全になくすものではなく、これはあくまで性別に関係なく全ての学生が快適に生活できる環境を整えることが目指されています。

・通称名の取り扱いに関する課題が挙げられます。大学のシステム上通称名を申請すると、保護者に届く書類なども通称名に変わってしまうため、カミングアウトしていない学生にとっては困難な状況です。この問題を解決するために、通称名の取り扱いに関するルールやシステムの見直しが必要です。

・だれでもトイレの設備が完全には整っておらず、「だれでも」の定義を見直す必要性があります。全ての人が安心してトイレを利用できる環境を整えるために、トイレの設備やルールについて改善が求められています。

・留学生への対応に関する課題が挙げられます。パスポートの性別欄ではF(女性)、M(男性)の他に、「男性」「女性」以外の性別区分を示す「X」という表示が可能となりつつありますが、学籍上の性別が「女性」もしくは「男性」しか登録できない課題があります。留学生も含めて全ての学生が同等にサポートされるような体制を整える必要があります。
※2024年4月現在は学籍システムが改修され、パスポートの性別情報が「X」である方の場合は学籍上「その他」を選択できるようになりました。なお、上記対応は、パスポートにおける性別区分が「女性」「男性」以外の者に限定し、自身の戸籍上およびパスポート上の性別に違和を抱える方は対象となりません。(2024.4.17 追記)

・今後はサークル内でのLGBTQ+排除を減らすために、サークル長や学園祭運営側への啓発パンフレットの作成やワークショップを通して、LGBTQ+への認識を再確認してもらう活動が計画されています。

インタビューは以上となります。

【早稲田大学GSセンターへの訪問・インタビューを終えて】

今回、GSセンターを訪れて学生の居場所づくりに特化したさまざまな取り組みをお伺いしました。GSセンターの役割には、「居場所づくり」から個別相談、「リソースコーナー」の提供、そして様々なイベント企画まで、多様なサポートが提供されていました。GSセンターだからこそ、可能である支援・取り組みの多さがあることを実感しました。他の学生と交流を深めたり、専門職員に相談したりすることのできる居心地の良い空間が提供されることで、気軽に自分の悩みや問題を打ち明けることができ、適切なサポートを受けることができます。ジェンダーやセクシュアリティに関する書籍や雑誌、コミックスなど豊富なリソースの提供がされており、学生は自己啓発や情報収集に役立てることができます。さらに、定期的に開催されるイベントやワークショップを通じて、ジェンダーやセクシュアリティに関する啓発活動が行われ、学生の理解や意識の向上が図られます。
 また、表面上の取り組みではなく、実際に学生の声を聞き、それを実行している姿勢が印象に残っています。誰一人取り残されない取り組みを積極的に行い、常に改善し続けている早稲田大学の取り組みは、彼らの居場所へとつながっています。今後是非獨協大学でも参考にさせていただきたいです。

以下は学内の様子やGSセンター内の紹介です。