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2023/2/14 - DoTTS Faculty 教員コラム

「一杯のコーヒーが世界を変える」(北野収)

学内カフェ

長かった「コロナの冬」にもようやく春の兆しが見え始めてきたような気がいたします。再燃する可能性もあるので、もちろん油断は禁物です。獨協大学内のカフェや学生食堂も営業を再開しています。上の写真は学内のカフェの窓に貼られたポスターです。

このカフェでは、フェアトレード(公正貿易)のコーヒーを提供し始めました。コーヒー、チョコレート、紅茶、バナナなど、熱帯地域の開発途上国でしか生産できない第一次産品(農産品など)あるいはアパレル商品は、その国の基準に照らしても不当に安い買取り価格や低賃金に依存している場合が多いです。そこには児童労働も含まれます。これは国際的な人権問題および環境問題ですが、一概に誰が悪いと決めつけることができないことも悩ましい現実です。

「この商品を買うのはよくない」「この商品は危険だ」…といい出すと、何を買ってよいのか分からなくなる、という声を時々耳にします。たしかにそれも現実です。だからといって、日本も含め世界中にはびこるブラック労働を放置してよいということにはならないでしょう。「ブラック労働がはびこるのは、その国の政府がきちんと取締りをしていないからだ」と考える人は多いと思います。表面的にはそう見えても、世の中はそれほど単純ではないのです。グローバル経済、植民地の歴史、独立後の国内の政治経済的格差、低価格商品を求める世界中の消費者のニーズなど、様々な要因が複雑に絡まり合っています。

フェアトレードの起源には諸説あります。ちなみに、この写真にある「フェアトレード国際認証ラベル」制度は、1988年にオランダとメキシコとの間で始まりました。この仕組みを創ったのは、メキシコのオアハカ州の先住民族農家とオランダ人のフランツ・ヴァンデルホフ神父とその仲間でした。ヴァンデルホフ神父は「解放の神学」という弱者救済と社会正義を重視する宗派の流れを汲むカトリック司祭です。かつて、私はヴァンデルホフ神父と農家たちを取材するため、メキシコ南部の山岳地帯に通いました。そのことは著書にまとめました。また、神父の著書の翻訳もしました。

交流文化学科でも、「開発文化論」「食の文化論」「英語専門講読(フェアトレード/スローフード)」などの科目で、こうした問題を勉強することができます。

寒い日が続きますが、受験生の皆さんにおかれては、自分の志望校へのご縁が実を結びますよう、陰ながらお祈りしております。(北野 収)