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2022/12/20 - DoTTS Faculty 教員コラム

マンドリンの愉しみ(北野収)

大学は学問の場ですが、同時に、スポーツや文化活動など、部活やサークル活動も大学生活において大切な学びの場でもあります。

皆さんはマンドリンというイタリアの楽器を知っていますか。最近はウクレレ・ブームなので、ウクレレとよく間違えられますが、全く別の楽器です。今回は、私の趣味の1つであるマンドリンのことについて綴りたいと思います。日本では大正~昭和にかけて、学生を中心に一世を風靡した楽器で、かつてはギターよりもメジャーな存在でした。マーチン社やフェンダー社と並ぶ世界最大のギターメーカーの一つであるアメリカのギブソン社は元々マンドリン(ただしフラットマンドリン)を製造する工房から始まったのです。もちろん、今でも大学、高校、社会人の楽団など各地にマンドリンの団体が数多く存在しています。

マンドリンには大きく2種類があります。クラシック音楽で使われるイタリア発祥のオリジナルのラウンドマンドリン(茄子型の琵琶のような楽器、ヘッドの形状にナポリ型(私の愛器の写真)とローマ型がある)、そして、アメリカで開発されたカントリー音楽やブルーグラス音楽で使用されるフラットマンドリン(シルエットがアルファベットの「A」の字に似たAタイプ、筆記体の「F」の字に似たFタイプがある)があります。フラットマンドリンはストラップをつけて立って弾くのに適しており、ラウンドマンドリンはクラシックギター同様に座って引くことを想定しています。どちらのマンドリンも音程・音階(低い方からG-D-A-E)や使用する弦は同じです。

「G-D-A-E」という調弦は実はバイオリンと同じで、左手の指で押さえる箇所のピッチや音階もバイオリンと同じです。バイオリンを膝の上で横に寝かせて、ギターみたいに演奏する訳です。ただ、バイオリンにはフレットがありませんが、マンドリンにはフレットがあります。写真をみると分かるようにマンドリンは8弦です。これは、「GG-DD-AA-EE」というように、全く同じ音程の弦が2本ずつ(復弦)あるのです。これによって、単弦楽器のギターよりもトレモロ奏法を楽に速く行うことができるのです(トレモロとは、単音を早い間隔で鳴らすことにより、持続音のように奏でること、エレキギターのトレモロ奏法とは全く別物)。マンドリンはティアドロップ型のピックで弾きます。初級レベルに限定すれば、おそらくあらゆる楽器のなかで最も易しい楽器でしょう。ただし、上手に音楽的に奏でるには相当の努力が必要です。

クラシックマンドリンは、バイオリンを中心とする弦楽とほぼ同じような構成のマンドリン楽団、マンドリンアンサンブル、マンドリンオーケストラの形式で演奏されます。高音部と主旋律(ソプラノ)を受け持つ第一マンドリン(「ファースト」)、アルトおよびハーモニーやリズムを受け持つ第二マンドリン(第一と同じ楽器、「セカンド」)、中音部と主旋律を受け持つマンドラ・テノール(マンドリンより一回り大きい、通常は「マンドラ」「ドラ」と呼ばれる)、低音部とリズム等を受け持つマンド・チェロ(通常は「チェロ」「セロ」と呼ばれる)に加えて、コントラバス、クラシックギターという、6つのパートがあります。場合によっては木管楽器、打楽器が加わります。

マンドリンオーケストラがどのような曲を演奏するのかといえば、大きく4つのジャンルに分類できます。
①イタリアやヨーロッパの作曲家によるマンドリンオーケストラまたはアンサンブル専用に書かれた「マンドリンクラシック」(といっても19~20世紀初頭が中心)。
②通常の弦楽や管弦楽向けの楽曲をマンドリンオーケストラに置き換えて演奏する場合。
③現代の日本人マンドリン音楽作曲家によるマンドリン用の楽曲。
④民謡、ポピュラー音楽、Jポップ、洋楽ポップス、イージーリスニング、クリスマスソングをマンドリンオーケストラで演奏する場合。
やはり、マンドリン専用に作曲された①や③は音色や奏法を最大限発揮できるような曲が多く、弾いていて一番楽しいです。

私は学生時代、主にセカンドパート担当でした。自分の性格から、セカンドが一番好きです。セカンドは主旋律を弾くことはありません。ソロもありません。メロディ担当のファーストパートとドラパートの陰で、ひたすらハモリとリズムを担当します。一人で練習している時は、一体どのような曲をやっているのか分からないのですが、いざ皆との合奏なかで弾いてみると、自分のパートの存在意義を感じるのです。「他者の存在によって自己認識が形成される」――この裏方感がとても味わい深く、時に心地よいのです。それでも上級学年になって、パートリーダーになると、後輩の指導とか、他のパートとのバランスやニュアンスの摺合せとか、いろいろ大変でした。スポーツも同じだと思いますが、合奏という「団体戦」からいろいろなことを学んだ気がします。

マンドリン楽団の奏でる音は何物にも代えがたい美しさと癒しがあります。私には、なぜかマンドリン合奏(特にドラのトレモロの音色)が人の声のように聞こえるのです。ちなみに、私はロックもジャズも大好きです。

獨協大学にもマンドリンクラブがあります。
https://dokkyomandolin.wixsite.com/dokkyomandolin

幸いなことに、私は獨協大学マンドリンクラブの顧問をさせてもらっています。今は学科長の仕事でとても忙しいので無理ですが、仕事が落ち着いたら、いつでもクラブに顔を出せるよう、研究室には予備のマンドリン(こちらはローマ型)を置いてあります。

高校でマンドリンをやっている皆さん、獨協大学で一緒にマンドリンを弾きましょう!