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2021/8/6 - DoTTS Faculty 教員コラム

映画『東京クルド』をみて(須永和博)。

 さいたま市の自宅から職場のある草加に向かう途中、コンビニに立ち寄ってコーヒーを買うのが日課だ。そのコンビニには、早朝外国人の姿も目立つ。解体業などに従事するクルドの人々だ。建設現場などで働く人の朝は早い。6時過ぎには家を出て、コンビニで朝飯や昼に食べる弁当などを買って現場に向かうのだろう。

 獨協大学にも程近い川口市や蕨市には、1,500人前後のクルド人が暮らしている。その多くはトルコ出身で、トルコの迫害から逃れるために、日本にやってきた人たちである。

 『東京クルド』は、その川口・蕨が舞台のドキュメンタリー映画である。主な登場人物は、2人のクルド人青年である。2人とも小学生の頃に日本へやってきて、日本語が堪能。しかし、難民申請が認められないために、「仮放免」という不安定な身分で、長年日本に暮らす。就労は原則不可、2ヶ月に1回入管に行くことが義務づけられる。

 それでも、主人公の1人ラマザンは、通訳になることを夢見て、日本語と英語を熱心に学び、専門学校受験を試みる。しかし、「仮放免」という身分ゆえに、専門学校は受験資格すら与えてくれない。本来、仮放免という身分であっても、教育を受ける権利はあるはずである。実際、ラマザンは通訳になる夢を諦め、自動車整備士になるべく、受験資格を与えてくれた自動車大学校に高校卒業から3年を経て、入学する。(ただし、「仮放免」の身分のままでは、卒業後に仕事に就くことはできず、彼の将来は以前として不安定である。)

 もう1人の主人公オザンは、端正な顔立ちを生かして芸能事務所に入り、TV出演の話まであったのだが、「仮放免」という在留資格が分かった途端、白紙に。どんなに努力しても、「仮放免」の身分では何もできない。時折、映画の中で2人が面談をした際の入管職員の声が流れるが、「どっか他の国へ行ってよ」などの暴言を吐く(入管ってところは、本当に酷い場所だと改めて実感)。

 こういう現状に対して、私たちは何が出来るだろうか?同じ埼玉にある大学として、何か出来ることはないのか。アファーマティブ・アクションという言葉が頭に浮かぶ。こうしたことを本気で考えるべきではないかと、この映画を見て思った。