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2025/2/27 - DoTTS Faculty 教員コラム

タイ・メーホンソン紀行 1(須永和博)

 先日、調査のため1週間ほどタイに行ってきました。目的地は、首都のバンコクから北西に800キロほどの場所にあるメーホンソンという街です。

 皆さんは、タイ料理と聞いてどのようなものを思い浮かべますでしょうか?トムヤムクン、ガパオ、グリーンカレー、パパイヤサラダ、、、。これらはタイ料理屋さんに行けば必ずあるであろう定番メニューだと思います。しかし、タイの食文化は地域によって実に多様です。地方都市に行って、その土地ならではのローカル料理を味わうことは、タイ旅行の醍醐味でもあります。

 今回訪れたメーホンソン周辺は「シャン文化圏」とも呼ばれ、シャン民族が多く暮らす地域として知られています。シャンは、ミャンマー・シャン州を中心に暮らすタイ系民族ですが(タイ・ヤイとも呼ばれます)、国境を接しているメーホンソンにもシャン文化が色濃く見られるのです。そのため、バンコクではなかなか味わうことのできないシャンの食文化に触れることができます。

 メーホンソンに行くと、私はほぼ毎日市場で朝食をとります(写真1)。市場で一番人気の朝食は、米麺にひよこ豆の熱い豆乳をぶっかけた「カオフーン」と呼ばれる麺料理です(写真2)。具材もひよこ豆豆腐を揚げたもので、豆腐尽くしのヘルシーな料理です。

写真1: 早朝の市場の風景

写真2: カオフーン

 これに飽きると「カオ・ソーイ」という肉味噌麺を食べます(写真3)。一般的にタイ北部で「カオ・ソーイ」というと、カレーヌードルのような麺料理を指しますが(写真4)、同じ名前でも別物です。

写真3: シャン料理のカオソーイ

写真4:タイ北部で一般的なカオソーイ

 また、ノンフィクション作家の高野秀行さんは、納豆がシャンのソウルフードであることを指摘しています(『謎のアジア納豆』)。納豆を潰して乾燥させたものを、炙ってそのまま食べたり、スープや和え物に入れたり、とにかくシャンの人たちは納豆を多用するそうです。メーホンソンの市場でも、乾燥させた煎餅みたいな納豆がたくさん売られています(写真5)。「納豆=日本」というイメージが強いですが、視野を広げることで、これまでとは違った世界が見えてきます。

写真5: 市場で売られている乾燥納豆

 このようにメーホンソンには、一般的にイメージされるような「タイ料理」とは異なる、多様な食文化が広がっています。実は、東京にも(私が知る限り)2軒ほどシャン料理店があります。どちらも名店ですので、興味ある人はぜひ。

 食べ物の話を書いていたら、肝心の研究テーマまで辿り着きませんでした。ということで、つづきは次回に。