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2024/9/5 - News&Topics

草加かがやき特別支援学校を訪問しました

2024年7月10日、髙橋雄一郎ゼミでは課外授業として、大学から徒歩で10分程度の場所にある、埼玉県立草加かがやき特別支援学校を訪問しました。学生が報告を書いてくれました。

文部科学省は特別支援学校を「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること目的とする学校」と位置づけています(文科省サイトより)。知的障害者が通う埼玉県立草加かがやき特別支援学校は、小学部、中学部、高等部からなり、全て合わせた生徒数は約350名ですが、教職員の数は180人以上と多く、一人ひとり異なる障害の特性に応じた授業が行われています。きめ細やかな支援と指導が行き届いている様子が印象的でした。

授業風景(写真提供:埼玉県立草加かがやき特別支援学校)

私たちは先生たちからお話を聞いた後で、実際に行われている授業を見学させていただくことで、特別支援学校がどのようなカリキュラムを組んで生徒たちを、就労や自立まで導いているのかを学びました。

教育について

草加かがやき特別支援学校には、知的障害のある児童生徒が在籍する「一般学級」と、身体障害等を併せ有する生徒たちが在籍する「重複学級」があります。一般学級は1クラス6人(小、中学部)または8人(高等部)に先生が2人という編成なのに対し、重複学級は1クラス3人で、医療的ケアが必要な生徒のために看護師さんも常駐しているそうです。

一般学級では日常生活に根ざしたテーマで国語や数学を教科横断的に学び、中学部、高等部では作業学習というカリキュラムにも多くの授業時間があてられています。重複学級は知的障害と身体障害の両方がある児童生徒が在籍するクラスのため、手を使ったあそびをしたり、リラクゼーションの授業を通して力の抜き方を教わったりしているそうです。

教室の様子(撮影:中里麗)

作業学習の内容は本当に様々で、陶芸や紙工芸、木工、レザークラフト、カフェ運営や食品加工、清掃などがあるようです。私たちもこの作業学習で作った作品を生徒会に所属する生徒さんに幾つかプレゼントしていただきました。どの製品もとても丁寧に作られていて、作った生徒さんのこだわりが手に取るように分かりました。

作業学習の目標は「主体性」、「コミュニケーション力」、「持続力」を身につけることだそうです。主体的に取り組めるようにゴールを明確に提示したり、モチベーションや学習意欲の向上のため技能検定という制度を設けたり、その日できた事や良かったことを評価する「頑張り表」を作ったりと、児童生徒ができることを活かし、自分で考え自分で動く、主体性を持って集中してその作業に取り組めるような工夫が散りばめられています。

また、コミュニケーション力をつけてもらうために生徒が困る状況を敢えて作りだし「ください」と話しかけるきっかけを作ったり、「できました」の報告の場面を増やすようにしているそうです。

手洗いのマニュアル(撮影:中里麗)
コミュニケーションを促すボード(撮影:中里麗)
セリフカード(撮影:中里麗)

その他にも「きらきらカフェ」という活動では生徒がカフェの運営としてサービスや接客をしていて、地域住民とのコミュニケーションの機会を作っており、生徒は喜んでもらうことをやりがいやモチベーションに作業学習を頑張っています。

また、このきらきらカフェと並んで草加かがやき特別支援学校の特色であると感じたのは「K→STYLE」というブランドの存在です。生徒が作った品質の良い製品を社会に発信していくことをコンセプトに、作業学習で作ったパンやビーズブローチや木工製品、革製品などに「K→STYLE」というブランドをつけ、イベントで販売したり、地域の施設へプレゼントしたりする活動をしています。

簡易的なレジシステムも使用し、会計まで生徒たちで出来るため、生徒たちにとってはモチベーションややりがいに繋がるというお話を聞いて、獨協大学とも今よりも更に多く、密な交流をすることができれば、草加かがやき特別支援学校の生徒さんの日々のモチベーションの向上に役立つことができるのではないかと思います。一緒にゲームやスポーツをしたり、かがやきの生徒さんに教えてもらって、一緒に紙や木材、革などの製品を作るというのもいいなと考えました。

ビーズでブローチを作る生徒(写真提供:埼玉県立草加かがやき特別支援学校)
作業学習で作られた、シュレッダーした紙を再利用してできたカップ(写真提供:埼玉県立草加かがやき特別支援学校)

見学で校内を一周して、先生の人数の多さに驚きました。普通学級では30人〜40人を先生が1人か2人で対応していると思いますが、草加かがやき特別支援学校では児童生徒3人〜4人に先生が1人は必ずついていました。

廊下に飛び出して走る小学部の児童に何人もの先生が名前を呼んで声掛けしていて、教職員全員で児童生徒全員を見ているのだなと、とても印象的でした。

見学を通して、特別支援学校の生徒たちはできないことも多いかもしれない一方で、私たちができないことを沢山できるのだと気付きました。私は革で製品は作ることはできないし、ビーズでブローチも陶芸作品も作れないと思います。パソコンルームにお邪魔した際も、私はこの課題を迷わずにできるだろうか…と思い、すらすらとこなしている生徒さんを尊敬しました。

「普通」という言葉の意味を考えさせられるきっかけにもなりました。同時に、特別支援学校ならではのケアの数々を目の当たりにし、インクルーシブ教育が必ずしも正しく、全面的に受け入れるべきものなのかという疑問も出てきました。特別支援学校でしかできないケアがある一方で、社会との繋がりが減るという欠点もあるため、慎重に考えなくてはならない議題だと思いました。

進路について

特別支援学校卒業後の進路としては大きく2つに分かれ、、一般企業に就労する「一般就労」と、支援を受けながら働いたり、働くための支援を行う「福祉的就労」があるそうです。卒業生の約8割は後者の福祉的就労に就くことになります。

障害者法定雇用率が2.5%に引き上げられたので、従業員を40人以上雇用している民間の事業主は、障害者手帳を持った人を一人は雇わなくてはなりません。かがやきの生徒で一般就労を目指す人は主にこれを目指すことになります。採用には本人の適正と職場や業務とのマッチングが重要になるため、生徒は現場実習を数社で繰り返すことになります。このようにきちんと手順を踏みマッチングをしておくと、職場の合意も得ることができ、定着がしやすくなります。業種も近年はかなり幅広くなっていて、自分の得意を生かして働くことができるそうです。

福祉的就労の事業所は様々で、就労移行支援や自立訓練、就労継続支援A型・B型などがあります。生徒のニーズによって行くところは変わります。

一般就労も福祉的就労も一度就職したら終わりではなく、福祉事業所内を行き来することもあれば、福祉的就労から力をつけて一般就労に移行する場合もありますし、その反対もあるそうです。いずれにしても、個人のできることや特性と働く場所がマッチすることが個人にとっては最善であり、その基盤となる力を教科横断型の勉強、主体性、コミュニケーション能力、持続力をつけるための作業学習で身につけているのだと感じました。

文:渡乃愛(高橋ゼミ4年)

(参考)
文部科学省、「特別支援教育の現状」(2024年8月7日アクセス)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/002.htm

視覚的に分かりやすい表示(撮影:中里麗)
革で製作された作品(撮影:中里麗)