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2022/2/24 - News&Topics

2021年度 春ゼミ実施報告(須永和博研究室)

 須永和博研究室では、2月17日(木)から2日間にわたって、春ゼミを実施しました。

 1日目は、3年生による卒論構想会です。文化人類学を学ぶ須永ゼミでは、対象やテーマは自由ですが、時間をかけた濃密なフィールドワークを行い、その成果をエスノグラフィとしてまとめることが求められています。卒論構想会では、各々が選んだテーマについて先行研究をまとめ、予備調査を実施した上で、その成果を報告し合います。

 今回は、まちづくり、民俗芸能、ゲストハウス、子ども食堂、都市農業、移民第二世代の教育、ラップミュージック、災害復興と地域文化などのテーマが取り上げられました。これから就職活動で忙しくなるので、しばらく卒論制作は中断しますが、来年、無事卒論として仕上がることを期待しています。

 2日目は、町歩き型のフィールドワークです注1)。まず東京都庭園美術館にて開催中の「奇想のモード─装うことの狂気」展を見学しました。中国の纏足、昆虫や毛髪を使ったアクセサリー、19世紀後半のヨーロッパで流行した珍しい野鳥の剥製を使った帽子など、装いに関わる様々なモノが展示されていました。この展示を見ることで、人間にとって「装う」とはどんな意味をもっているのか、文化人類学や美術史の知見などを踏まえつつ考えました。

 その後、白金や麻布といった、いわゆる「山の手」と呼ばれる地域を散歩しました。この地域は、江戸期に形成された地割りや土地利用が現在でもそのまま残っているところが少なくありません。かつて大名屋敷だった場所が、公園や大使館として利用されていたり、あるいは町人地だった場所が現在でも商店街として賑わっていたりします。江戸時代の古地図を片手に、これらの地域を町歩きしながら、その歴史的連続性や場所性について理解を深めました。

 こちらの写真は、有栖川宮記念公園です。この公園は、江戸時代には盛岡南部藩の下屋敷でした。当時の回遊式庭園の名残が、今でも残っていて、近隣住民の憩いの場となっています。

 公園の近くには、世界の様々な食材を販売するスーパー「ナショナル麻布」があります。周辺には大使館も多いので、大使館関係者達御用達のお店だそうです。(ちなみに某先生は、ここまでジャマイカ産のビールを買いに来られるとか)。

 山の手は坂の町。坂が作り出す特徴的な景観が随所に見られます。下の写真は、暗闇坂と名付けられた坂です。江戸時代、木が鬱蒼と茂っていたことから名付けられたそうです。現在でもちょっと薄暗い雰囲気が残っています。

 周辺にはたくさんの大使館があります。日本にある大使館・領事館の約半分がこの界隈にあるそうです。大使館独特の意匠などに注目しながら、散歩するのも楽しい経験です。

 ドイツ大使館の壁には、日独関係などを紹介する絵が飾られています。

 最後に六本木ヒルズにある森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」を見ました。都市、資本主義、核(原発)など、現代世界が抱える様々な問題に向き合い、主題化してきたアーティスト集団の作品を見ることで、「オルタナティブな世界」のあり方について、現代アート、哲学、人類学などの知見を踏まえつつ、考えました。

 朝から街歩きを開始し、解散した時にはもう日が暮れていました。なかなかのロングウォークでしたが、色々なことを考えた1日でした。参加した皆さんは、お疲れ様でした。

注1:交流文化学科では、東京各所を実際に歩きながら、その特徴について包括的な理解を目指す授業「フィールドワーク論」も開講しています。